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執筆者の写真北区堀船カンフークラブ

同じ雲井の月を見しかな③~邂逅編


欲しかったのはこっちの方。1,800円。これが買えなかった手持ちって・・・。


全伝八極拳

初めて目にしたのはどこの書店だったろうか。

だがどんな感じで置かれていたかは覚えている。

よく下は平積み、上は表面をこちらに向けて

重なり合うようにディスプレイしてある棚があるじゃないですかい。

コンビニの雑誌コーナーみたいなやつ。

ふと目をやったそういう棚の一部から、重要な情報が飛び込んできた気がしたのだ。

真っ赤な表紙。

“・・極拳” タイトルが隠れている。

片手でつかんでズボ、引き抜く。

それこそ私の人生を大きく変える契機となった冊子。

福昌堂刊『全伝八極拳』であった。

八極拳といえば『拳児』の主人公・剛拳児が使う中国武術。

まるまる一冊、その八極拳を特集した冊子である。

「! これがホンモノの八極拳か・・・!」

ひらいてみて驚き。

これは『拳児』のあの登場人物のモデル! そっくりだ!

おまけに名前も似せてきてたのか。一文字違いとは(笑)

あああの技だ! 入り方も連続写真で!

修行法も! 秘伝も! 一問一答も!

ああ~~~~!

めくるめく立ち読み体験! ゴールドエクスペリエンス!

これは我が家に保護せねばなるまい。さっそくレジへ。

その前に価格の確認だ。

「・・・足りない」

今にして思えば大したことのない金額なのだが、

19歳の佐々木青年はちょうど持ち合わせがなかったのだ。

まあいい、次にこの書店に立ち寄った時には必ず・・・!

↓ ↓ ↓

入院。

だがようやっと、

「あきら差し入れだぞ。これでいいんだろう?」

『全伝八極拳』が私の元に!

「ああ助かるわ。これで入院生活も少しはマシに・・・」

ガサガサと書店の紙袋を破くと、

「・・・違う」

ああ何ということであろう、私の肺に穴を開けるだけでは飽き足らず、

この林大助という男は私から楽しみまで奪おうというのか!

が、結果として、この間違いおつかいが

私の人生を更に大きく変えることになるとはまさに奇縁。

私の手元にやって来たその雑誌--。

福昌堂刊『武術』1992年夏号!

(つづく)

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