(これもすごくためになった小田伸午著
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』)
2014年の一年間、どうやら私はほとんど歩いていなかったようだ。
歩かないことを決めたのはその年の1月。
はじめの内は“そのこと”だけを考えながらの移動なので
心身ともにへとへとだったのを覚えている。
だがなんでも続けていれば報われる時が来るというもの。
当時の修行記録、4月の記述。
「今日は気がつくと例の足になっていた。初めて意識せず」
肉体改造成る。ついに歩かないことが日常生活に溶け込んだのである。
・・・佐々木ついに狂す。
いやちがう。私は正気だ。概ね。
いまあなたがどこにいるか知らないが、ちょっと歩いてみてほしい。
ぁおいっちにー、ぁおいっちにー。
しっかりつま先が地面を蹴って前に進んでいるだろうか?
歩くときの二本の脚には名前がついている。
地面を蹴り一歩踏み出す足を遊脚、
その間あなたの身体を支えているもう一本の足を支持脚という。
普通は遊脚が重心を進行方向に移動させる。多分あなたがそうしているように。
2014年、そういう意味で私はほとんど「歩いて」いなかった。
つまり、膝の抜きと重力を使って歩むという武術の教えにしたがい
地面を蹴らずに歩いていたのである。
武術は情報戦、とたびたび書いてきた。
この「歩み」も重大な情報の一つである。
片足が踏ん張り力をため、よいしょと地面を蹴って移動が始まる。
この情報が消えるだけでどれほどのアドバンテージがあることか。
かくして多大なる努力を傾注した結果、
私は地面を蹴らない身体を手に入れたのであった。
時は流れて2017年。今の私といえばフツーに歩いている。
なぜか? ・・・だってつま先で地面を蹴って足の裏を使わないと
外反母趾の原因になっちまうもんだから。
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