「今日習ったこの技、誰彼かまわずかけてみたい」
「この技を遠慮なく使える、そんな機会がやってこないものか・・・」
なんとも恐ろしいことを考えるものだが、
あらゆる習いごと、芸事に携わる人にその段階はやってくる。
ロバート・キーガンの成人の発達段階理論でいう第二段階である。
つまり「パワー」や「勝敗」が一番重要な時代だ。
「いやいや私は伝統文化として武術の嗜む者ですから」というあなた。
もしそれが本当なら、なおさらこの第二段階を迎えてさらに超えていかないと
そういう方面の上達は見込めないのである。
「あいつと俺とどちらが強い?」というこの段階を味わい尽くし満足しないと、
第三段階、第四段階には発達しない、というのがこの理論の骨子だ。
「この技がかかるか試してみたい」から、
「この技が自分に要求している正しい動き方を身につける」へ移行する時、
つまり「強さ比べ」に関心がなくなったとき、
結果として発達の段階が進むことになるのだろう
(発達の段階が進む=武術の腕前が上がるではないのだけれど)。
今考えると同門で上だの下だの本当に意味がないのだが、
私とて20代の頃は「あいつと俺とどちらが強い?」に関心があったものだ。
今では「怪我せず健康に長生きして修行を全うすること」を願うばかり。
が。
先日行われた天龍武術会新年会。その二次会の席上のことである。
兄弟子Hさんが
「今年の目標は実際に当てる大会に出場すること」とぶち上げた。
その瞬間、私と隣にいた師匠、期せずして
「じゃあ練習し よ ま しょ う よ~」とハモってしまった。
う~ん、たまにはバチバチやるのも血が騒ぐ!
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