といえば『カムイ伝』の主人公、カムイである。
そして『カムイ伝』といえば『カムイ外伝』剣風の巻、阿多棒心師である。
異論は認めない。
「おぬしにあれが斬れるかな・・・」とカムイに月を指し示す棒心師。
「月は斬るものではない・・・」
「フフフ、おぬし本当は斬れんのじゃろう」
「なら、あなたには斬れると申されるか!」気色ばむカムイ。
どうじゃな・・・ す、と池に映る月影を棒で二つにする棒心師。
「それは月影を斬ったにすぎん・・・」
「そのとおり。影じゃよ・・・。
そら、その水たまりにも・・・。そこの船の中にも・・・」
そして自分の笠ですくった水にも映る月影を示し、
「水に映る月は無数じゃ・・・。だが月は一つ。あれじゃ・・・」
天空に輝く満月を指さし棒心師は言う。
「ただ一つの月を斬る!」と。
水月、という口伝は意味や形を変えてさまざまな武術に伝わっている。
当然のように我が柳生心眼流の巻物にも書いてあるが、
水月を観想するとき、もっとも大きな影響はこの棒心師の言葉なのであった。
Comments